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福岡高等裁判所那覇支部 昭和48年(く)2号 決定

少年 N・O(昭三二・八・七生)

主文

原決定を取り消す。

本件を那覇家庭裁判所コザ支部に差し戻す。

理由

本件抗告の趣意は、少年の法定代理人N・N子が提出した抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用するが、所論は、要するに原決定の処分の不当をいうものである。

そこで、所論にかんがみ、本件記録並びに少年調査記録を精査、検討し、当審における事実取調の結果をも参酌して審案するに、原決定が少年を初等少年院に送致する事由として掲げるもののうちには、首肯される点も存しないわけではなく、とくに本件各非行の態様が悪質ともいえるものであること、相当長期間続けられていること、少年が共犯者中主導的であつたとみられないでもないこと等からすると、かような非行性を除去するためには施設内処遇以外の方策はないとすることにも一理なしとしないが、ひるがえつて考えてみるに、少年の本件以前の前歴としては、警察に二回位補導されたというにとどまり、身体の拘束を受けたのは今回が始めてで、保護者ともども相当のショックを受け反省していることを窺うに十分であり、従つて、保護者の保護能力には一抹の危虞なしとしないものがあるが、性格面に未だ特段の偏りも認められない少年自身の自発的な更生意欲に期待できるものがある以上、学校側の少年受入れの態勢、保護者の少くとも原決定後の現段階における少年保護の熱意(なお、本土にあるとはいえ、少年の実兄が少年ないし保護者に対し払うようになつた肉親としての配慮も良い効果をもつものと考えられる。)等をも考慮すると未だ可塑性に富むことの明らかな本件少年に対しては、在宅保護によつてその矯正教育を施すのが相当であると考えられる。

されば、少年を初等少年院に送致する旨の原決定は、結局において著しく相当性を欠いたものというべく、少年法三三条二項に則り、原決定を取り消したうえ、本件を原裁判所である那覇家庭裁判所コザ支部に差し戻すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤井一雄 裁判官 屋宜正一 天願俊貞)

参考二 少年N・Oの少年調査記録〈省略〉

参考三 法定代理人親権者母の申立書

少年吉野英男は昭和四七年一二月二一日郡覇家庭裁判所コザ支部においては初等少年院に送致する保護処分決定の言渡を受けましたが下記理由によつて不服ですから抗告を申立ます。

少年がおかした罪はたいへん申分ないと思つて居ります私が夜昼仕事をもつて、この子のめんどうをみるのが不じゆうぶんだつたためにこの子にこんな気持をおこさせたことに全よく反省して居りますので、もう一度だけは自分の手本に帰えして私にこの子の教育をまかせて下さいませんかお願ひします。あの子も面会で自分はまじめになるからもう一度学校に行きたい裁判のやりなおしは出来ないかねと言つて居りました。あの子も私も今はこういう心境にありますのでもう一度裁判をお願ひします。

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